05
2016/3/24, Thu 18:25
往復書簡 つづき(from 川瀬)

相模さん、佐藤さん

公演おつかれさまでした。
当日、信州大学生の皆の力添えはとても大きかったですね。
また何かの形で会えるといいなぁと思えることが嬉しいです。

往復書簡の質問に応えてもらいつつ、その返信をさておき公演当日のことを少し書かせてくださいね。

京都公演のラストの回を劇場の中に入ってみせてもらい、その後の美術家•加納俊輔さんとのトークまでを立合わせてもらいました。
実は、開演の5分前くらいから佐藤さんのダンスがはじまるわけなんですが、
そこから観られたのはこの日が最初でした。
(稽古場では、開演時間以降のところ、モノが舞台上に登場してからを観せてもらっていました)

時間の流れ方、客席と舞台との距離感、そういった目に見えない色々なことの伸縮がふんだんにあって、私もイチお客さんとなって、当日はとても面白く観ていました。この伸縮の鮮やかさは、私がこれまで意識的に触れて来られなかったことで、とても新鮮でした。
制作方をするのは初めてというのもあり何かとバタバタしていたとはいえ、公演前に最初から観ておけてたらなぁと、単純に惜しい気持ちです。
みせてもらったのがラストの回だったので、私も大分落ち着いて集中できました。
稽古場で観ていたときは、集中するつもりが妙に気持ち焦っていて、色々なことを見落としていた感があります。

公演会場や日程を決めてから動くのではなくて、そもそも上演するかも考えずに稽古場に入っていたということですが、(往復書簡03)
つくられる「作品」にも、会場や日時などといったことを含む「公演」というものにも、まったく影響されていない状況で稽古を始めるというのは、クリエイションをとても純粋な状態で始められる、ということなのかもしれないと思いました。
(ちょうどいい言葉が見当たらず、「純粋」という言葉が合ってるか自分でも分からないのですが…)

よく佐藤さんとは、「振付」ということを大きな意味で捉えた時に、振付はダンサーの身体や作品の中だけにあるのではなく、例えば稽古場や生活の中にも振付が存在している、というようなことを話していたように記憶しています。
そういう見方でいうと、今回の稽古場の状況においても、ある意味で、既存の振付からは自由になるように、振付られているのかもしれないと思います。

たくさんの作品を見たり話したりする中で、「振付」というところに焦点があたっていったのも、とても自然な流れだったのかなぁと感じました。

> 「振り付け」って演劇の戯曲とか音楽の楽譜と同じようなもんですよね。という事は何となく話してたんですが、あらゆる振り付けが戯曲や楽譜のようにあらか じめ記述された「スコア」として機能しているのかどうかはちょっと疑わしいぞ、とも思っていました(最近は振り付けを記述する方法を模索する動きもありま すね)。
それで、もう少し「スコア」の必要性というか、機能というかそういうものを考えてみた時に、「動きを指示する/ナビゲーション」っていう機能はあるだろうし、振り付け=動きの指示/ナビゲーション=スコアっていう繋がりがそこで出てきたと記憶していて、それが今回の作品の始まりだったと思います。
(往復書簡03:相模さん)

> ダンスは身体のポイントがある地点から別の地点へ移動するという所から始まり、 演劇はシチュエーションが移動する事から始まるんじゃないかという仮説をたてていました。
身体の移動という点で 、例えば僕の家には何処に何が置いてあるかを知っていたり、家具や 家電製品の癖を知っていたりするので、比較的滞りなく生活を送れるし、移動もスムーズなので ダンスの上手な人といえるかもしれません。
(中略)結局目的地への最短ルートを知っているということかなあ?とか。
そんな話をしてた時に、相模君がそれってカーナビですかねえ?とか言ってるところから作品のタイトルが浮かび上がってきたように記憶しています。
(往復書簡02:佐藤さん)

それぞれにナビゲーションズのはじまりが記憶されているのが面白いですよね。
近しいところと、良い意味でズレのあるところ。

<振り付け=動きの指示/ナビゲーション=スコア>という繋がりの話から、
モノに記憶された身体の身振りを扱うようになる、というのも興味深いです。

動きをナビゲーションするのはモノなんでしょうか(モノの形状なのか、モノの扱い方の歴史なのか…etc)、それを扱うダンサーの方なんでしょうか、あるいは、それを見ている人の方なんでしょうか(どのようにその動きを受けとるか)。
といった具合に、振付の担い手がブワっと膨張して誰のものでもなくなっている感じがして。そういったことが、丁寧に見せられて行く時間はとても貴重だなと思います。

あと、最短ルートを知っているカーナビですが、カーナビって、結構移動しにくい経路を案内して来たりするイメージもあります。
道を走るって単純に距離だけが話題に上がるものでもないよなぁと、つっこみたくなる一方で、実は遠回りを案内されてたりもして。

ダンスでも、予め用意された振付からぐいぐいと外れて行くところにうまみがあったりすると思いますし、そうやって振付から外させる機能を、その振付に期待されて作られている面もきっとありますよね。
(私はまだまだ、はっきり確信もってコレと具体的に言えないのですが。)

この話しと繋がって来るかはわかりませんが、
私はナビゲーションズに関わっていくなかで、自分の関心の着地点がディティールにある気がするなぁと気付いたことは大きかったです。
例えば、感情も含めた、ダンサー個体の感受するものが、身振り(動き)や立ち姿(空間)に現れ出るような瞬間です。

ナビゲーションズは、可能性をもっと拡げていける作品なんだろうなと思い、この先どんな風になっていくのかを思うととても楽しみで、いいなぁと思っています。
これまでにご覧になった方も、新たな土地で上演されるナビゲーションズを観てほしいなと単純に思います。

 

往復書簡、私から質問3つも投げかけましたが、膨大でしたね。
のこりの2つへは簡素だけど一応返してみます。
(佐藤さん:往復書簡04 への返事)

>福井、横浜、そして京都と、公演を重ねて来られたわけですが、

福井の新鮮過ぎて味のしないイカ、たべたいです。ざっくばらんに、終演後の会場でそのまま話せるスタイルはいいですよね。京都公演の立誠だったらどんな方法があったんだろう。そこまで今回は手が回らなかったですね。。
横浜公演でのアフタートークも充実したそうですが、今回の加納さんとのアフタートークもとってもよかったですよね。どんな会話がなされたか、あの場に居た人以外にもお届けしたいくらいです。

>京都公演では初の舞台監督がいるという。 

舞台監督として関わられたダンサーの竹ち代さんと佐藤さんは、過去によく一緒に舞台に立たれていたとのこと。また2人が舞台に立たれるときは、みたいです。
座組が全員ダンサーという京都公演でしたが、ダンサーでもあるし制作もするということについて、途中お話しっかりできたのは、ありがたかったです。公演を終えて数日たった今、このことについてはもうちょっと長く、これからも考えて行こうと思います。

長くなり過ぎたので、一旦この辺で。

公演は終わりましたが、まだもうちょいやることが残っています。
日程またご相談させてください!



04
2016/3/19, Sat 22:05
Re: 相模です。往復書簡。(from佐藤)

スコアの話の続きですが、振付(コレオグラフィー)の語源に『ひっかく』『記述する』というのがあるそうです。
ダンサーはスコアやタスクをもとに空間をひっかき、描いていくといった動きを繰り出していくのですが、
あらかじめ記述されているスコアで、違う次元である空間にスコアを描くという二重の作業が起きてきてちょっとよくわからんな〜と思ったりします。なぜなら観客は描かれた動きだけではなく、ダンサーの意識や状態、までも情報として受け取る作用を持っている筈だからです。これは日本人特有なのかもしれないですが。

>福井、横浜、そして京都と、公演を重ねて来られたわけですが、 
福井には2011年にソロをやって以来でしたが、第一の印象は食い物うまい!
魚介類は新鮮で、イカに関しては新鮮すぎて味がしないという話も福井出身の方から聞いて大爆笑してしまいました。
初演のアフタートークでは初めてこういった舞台を見るお客さんも、皆ざっくばらんに質問や感想を伝えてくれて、
作品に向き合ってくれているなという印象があります。そこから横浜への課題も生まれた気がします。
そして福井では京都造形大出身の濱見さん、横浜では島君の二人が公演のサポートをしてくれたお陰で二人で乗り込んでいくスタイルのこの座組には大きな助け になっていました。

>京都公演では初の舞台監督がいるという。 
京都公演は舞台監督としてダンサーの竹ち代さんに来てもらっているのですが、僕とよく一緒に舞台に立っていた人なので、作品だけでなく踊り手の目線で関わってくれるのは良い刺激になっています。

佐藤健大郎



03
2016/3/17, Thu 22:18
相模です。(from相模)

川瀬さん、佐藤さん

メールありがとうございます。いよいよ小屋入りですね。

川瀬さんからの質問に関して佐藤さんが書いてくれてた部分と重複するところもあるかもしれませんが、書きます。

『ナビゲーションズ』以前にダンサーの野田まどかさんと一緒にやった『先制のイメージ』や増田美佳さんとの『天使論』があって、この二つの作品の経緯に関してはdance+にインタビュー記事があるので、もし良かったら読んでみてください。
相模友士郎×西岡樹里 アフター・ダイアローグ 『先制のイメージ』から『天使論』へ
相模友士郎×西岡樹里 アフター・アフター・ダイアローグ『天使論』の先へ

その『先制のイメージ』を2012年に上演してから俄然ダンスへの興味が出てきて、もう少し「振り付け」にフォーカスを当てて作業してみたいという事で、佐藤さんに声をかけました 。
それが2014年の5月で『ナビゲーションズ』初演の6ヶ月前くらい。

特に上演する会場も、日程も、そもそも上演するかどうかもあまり考えずに、たまに会って話したり、youtube見たり、思いついたこと試したり、何か真面目にだらだらやってました。




▲最初の頃


そこでジョン・ケージの『water walk』とかジョナサン・バロウズとマッテオ・ファルジョンの作品とか、カントルとか何やかんや見たりしてて、
「振り付け」って演劇の戯曲とか音楽の楽譜と同じようなもんですよね。という事は何となく話してたんですが、あらゆる振り付けが戯曲や楽譜のようにあらかじめ記述された「スコア」として機能しているのかどうかはちょっと疑わしいぞ、とも思っていました(最近は振り付けを記述する方法を模索する動きもありますね)。

それで、もう少し「スコア」の必要性というか、機能というかそういうものを考えてみた時に、「動きを指示する/ナビゲーション」っていう機能はあるだろうし、振り付け=動きの指示/ナビゲーション=スコアっていう繋がりがそこで出てきたと記憶していて、それが今回の作品の始まりだったと思います。

>福井、横浜、そして京都と、公演を重ねて来られたわけですが、 
>京都公演では初の舞台監督がいるという。 
>とてもコンパクトな座組で めずらしいなと思うので、ぜひそのあたりの話しも聞きたいです。

ちょっと長くなってしまったので、続きはまた送ります。

相模


02
2016/3/15, Tue 19:27
往復書簡(from佐藤)

川瀬さん

稽古の最初のほうは、互いの過去の作品についての質問をし合った事があったのを覚えています。
また、作る過程で実験してみたけど全然うまく機能しなくて諦めた事(いわゆる失敗談) でよく盛り上がっていました。
それ舞台にあげてどうすんねんみたいな事。

でも以外と興味深いにはそっちのほうだったりして。
振付けの定義について話した所からタイトルが浮かんで来たのも覚えています。
ダンスは身体のポイントがある地点から別の地点へ移動するという所から始まり、 演劇はシチュエーションが移動する事から始まるんじゃないかという仮説をたてていました。
身体の移動という点で 、例えば僕の家には何処に何が置いてあるかを知っていたり、家具や 家電製品の癖を知っていたりするので、比較的滞りなく生活を送れるし、移動もスムーズなので ダンスの上手な人といえるかもしれません。
ただ他人の家とか仕事場に入ったりすると、 場所や、機能が分からないのでそうはいかなくなります。
じゃあ結局目的地への最短ルートを知っているということかなあ?とか。
そんな話をしてた時に、相模君がそれってカーナビですかねえ?とか言ってるところから作品のタイトルが浮かび上がってきたように記憶しています。

佐藤健大郎


01
2016/3/14, Mon 23:37
ナビゲーションズ:往復書簡のお願い(from 川瀬)

相模さん、佐藤さん

お疲れさまです。
さて、今日も話していましたが、
webに上げていきたいので、お二人に往復書簡をお願いしたいです。

ナビゲーションズに関わるのは私にとっては今回が初めてで、
作品のことはもちろんのこと、お二人がどんなことを考えたり話したりしながら、
作品が作られて行ったのかなど、ぜひ知りたいなぁと思うのですが…。

まず、
初演の福井公演のときのことから教えてください。
ナビゲーションズがつくられたわけ、どんな稽古から作品がたちあがっていったのですか?

つぎにこれも、
福井、横浜、そして京都と、公演を重ねて来られたわけですが、
京都公演では初の舞台監督がいるという。
とてもコンパクトな座組でめずらしいなと思うので、ぜひそのあたりの話しも聞きたいです。

おまけで、
ナビゲーションズでは「モノ」に記録された身振りを扱われていますが、
作品がはじまってから、実生活にも何か影響し合うものがあるなど、何か変わって行ったこと等はありますか?

よろしくお願いします。

川瀬亜衣


相模友士郎/Yujiro Sagami(構成・演出) 1982年福井生まれ。演出家。京都在住。2004年から舞台制作を始め、2009年に伊丹に住む70歳以上の市民との共同制作舞台『ドラマソロジー/DRAMATHOLOGY』を発表し、翌年フェスティバル / トーキョー10に正式招聘される。2012年に『天使論』をTPAM in YOKOHAMA2012にて発表。『天使論』は各地で再演され、2015年、TPAM in YOKOHAMA 2015にてタイのダンサー(Kornkarn Rungsawang from Picket Klunchun Dance Company)とのコラボレーション作品として再演。その他の作品に『中平卓馬/見続ける涯に火が…』(2011) 、『先制のイメージ』(2012)、『それはかつてあった』(2013)、『ナビゲーションズ』(2014) など。最新作はからだと意識の関係を空間にトレースする『リアクション』(2015)、信州大学の学生と共同制作した演劇作品『スーパーインポーズ』(2016)。http://www.sagami-endo.com/

佐藤健大郎/Kentaro Sato(出演) |1978年生まれ。兵庫県出身、京都市在住。ダンサー、振付家。大学卒業後ダンスを始める。 2004年迄ヤザキタケシ+A.D.Cに参加。フリーになり、砂連尾理,山田せつ子、日野晃氏の作品に出演、協同作業する。 ソロ作品「犬」(2007)「ミューザー」(2010) 。 森川弘和とのduet「conductor」(2012) 、David Wampachとの「FIRST SHOW」(2013) がある。 女性トリオ『筒状の白いsara」(2014) を発表する。 また、7人のダンサーが集まり90分で一つの作品を立ち上げるプロセスを公開する、「東山ダンスヤード」(2013) を企画。2005年から東山青少年活動センターにて『ココロからだンスWS』、2010年から身障者を対象とした『湖北身体WS』のナビゲーターを務めている。

川瀬亜衣/Ai Kawase(制作)1987年京都市生まれ。10年より千日前青空ダンス倶楽部に参加。14年春、国内ダンス留学@神戸2期修了、ダンサー奨励賞受賞。近年、黒沢美香、紅玉、佐藤有華、きたまり振付作品等に出演する。15年春に初振付作品を上演、以降自作自演のソロを発表。演出助手・WSアシスタントなどとしても作品創作の現場に関わっている。


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